現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第三回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についての続編です。
【成年後見制度の理念】
成年後見制度は,精神上の障がいにより,判断する能力が低下した人を支援する制度です。
成年後見制度は,平成12年(2000年)から施行されています。
成年後見制度が実施されるまでは,同じような制度として,禁治産制度がありました。
この制度は,判断する能力が低下した人は保護する必要があると考え,保護に重点を置いた制度になっていました。
保護することの究極的なことは,本人に何もさせないことです。
本人に余計なことをさせないように,本人が余計なことをすると,契約取消で対応し,財産もできるだけ減らさないように後見人が管理して,次の世代に引き継ぐということが行われていました。
このような禁治産制度は,用語自体が差別的であり,後見になったことが戸籍に記載され,また,後見の類型も後見と保佐の2つしかなく,本人の状況に応じて柔軟に対応できるような仕組みになっていませんでした。
禁治産制度は,このように保護という考えに重きを置いたものでしたが,成年後見制度は,本人の意思に配慮しています。
判断能力が低下していても,本人は人としての尊厳を有した存在として,自分の思いを反映した支援がされるべきとの考えに基づいています。
成年後見制度の理念は,3つあるとされています。
まず,自己決定の尊重です。
本人の希望に沿った支援が行われることは本人を尊厳ある存在として受け入れることであり,成年後見制度の重要な理念となっています。
次に,現有能力の活用です。
本人が現在持っている能力を活かして社会生活が送れるよう支えることを目的とします。
本人が持つ能力がある以上,それを活かすことは自己決定に資するものであるし,本人の人格,尊厳を尊重することにつながります。
最後に,ノーマライゼーションです。
障がいがあってもなくても,社会で共に同じように暮らせることを目的としています。
成年後見制度は,このような3つの理念に基づいて定められていますが,本人支援の現場では,理想どおりにはいかない場面もあります。
後見人を含む本人の周りの支援者が,本人にとってよかれと思うことを保護的に対応するというようなことがあります。たとえば,本人がいくら1人暮らしをしたいと言っても,後見人などが,本人の1人暮らしは無理だと決めて,本人を「説得」して施設に入所させることなどです。
理念どおりにはいかない現実があるとしても,成年後見制度の理念は,個人の尊厳に基づくものであり,この制度に関わるそれぞれの人が実践できるよう努力する必要があります。
※次回の掲載日は、5月13日前後を予定しております。
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