現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第16回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
【複数後見人】
成年後見人等は,必要なときは複数人選任されることがあります。
後見,保佐,補助のいずれの場合も選ばれることが可能です。
後見人等が複数人選任される場合とは,たとえば,親族が後見人になったが,親族だけでは金銭の管理が十分にできないという場合に,親族は身上支援(身上監護)をする後見人とし,財産管理をする後見人として別に第三者後見人を選ぶことが考えられます。
また,本人が障がいのために他人を強く攻撃するような場合,福祉の専門家である社会福祉士を2名あるいは社会福祉士と法律対応を専門とする弁護士とを1名ずつ共同で後見人に選任することも考えられます。
本人の状況とこれに必要な支援の内容を考えて,必要に応じて後見人を複数にするのです。
複数後見人が選ばれる事例はそれほど多くなく,ほとんどの場合は1人の後見人が選ばれています。
複数の後見人は,最初から選ばれている場合もあれば,1人の後見人が選ばれた後に問題があることが分かってから追加でもう1人選ばれる場合もあります。
複数後見人が選任された場合,各後見人は原則として,単独で後見人の全ての権限を行使できますが,家庭裁判所は必要に応じて,各後見人の職務範囲を定めることができます(権限の分掌)。
身上支援担当として親族を,財産管理担当として第三者を選んだりします。
権限を分掌せずに後見人間での事実上の分担にまかせることもあります。
権限を分掌するかどうかも本人の状況とこれに必要な支援の内容を考えて決めます。
複数後見人のそれぞれが思い思いのことをすると矛盾が生じます。
権限分掌のない後見人の1人が,本人のために施設入所を考え,他の後見人は本人のためにそれに反対するような場合です。
施設入所を考える後見人が入所契約をしてしまうと対立は深刻になります。
身上支援を担当する親族後見人が本人を泊まりがけでテーマパークに連れて行きたい,親族もついて行かなければならないので親族の交通費,宿泊費も出してほしいと求めるのに対し,財産管理を担当する第三者後見人が親族の分は出せないと反対すれば,後見人間に対立の溝ができ,関係がぎくしゃくしてしまいます。対立を調整する規定はないので,互いに協議して問題を解消するしかありません。
後見人が互いに自分の立場を主張して協議できず反目が深まれば,本人の支援が機能不全に陥ってしまいます。
後見人同士の考えが対立して協力関係を築けない場合は,家庭裁判所に間に入ってもらい,両者の調整をしてもらうことが考えられますが,それでも互いの信頼関係が築けない場合は,一方の後見人が辞任して別の後見人を選んでもらうしかないかも知れません。
後見人それぞれの価値観に基づいて主張し合うと譲れなくなるかもしれませんが,後見人自身の価値観から一旦離れて本人を中心に考え,本人が何を望み,何を希望しているか,本人が望むことの実現を目指すようにするならば,対立するのではなく,同じ方向を向いた支援も可能になるのではないでしょうか。
※次回の掲載日は、7月31日前後を予定しております。
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