現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第21回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
【成年後見と保全処分】
成年後見等の申立をしても,開始の審判がされるまでは期間がかかります。
裁判所の統計では,申立から1か月以内に約45%,2か月以内に約32%,3か月以内に約12%の事件で審判が出ているということです。
審理期間は短くなっていますが,この期間内に本人の財産の確保が難しくなったり,他人が本人の財産を取り込もうとしたり,介護が必要なのに受けられないというようなことが考えられます。
このような事態に対応するために,審判がされる前であっても,必要があれば家庭裁判所は保全処分決定をすることができます。
保全処分には,次のようなものがあります。
① 審判前の保全処分
成年後見等の申立てがあった場合,家庭裁判所は,申立てにより仮差押え,仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができます。
これにより,本人の債権の行使や所有権を確保することができます。
② 成年後見等開始審判に伴う保全処分
ア 成年後見等の申立てがあった場合,家庭裁判所は本人の生活,療養看護,財産管理のために必要があるときは,申立てまたは職権で,後見についての審判が効力を生ずるまでの間,財産の管理者を選任することができます(財産管理者の選任)。
他人が本人の財産を取り込もうとしていることが疑われるような場合,年金の振込口座を財産管理者が確保して他人に財産を取られないようにすることができます。
財産管理者は,本人の財産を管理する範囲で代理権が与えられますので,処分行為はできないと考えられており,預貯金の払戻を受けたり,解約したりすることはできないとされています。
イ また,成年後見等の申立てがあった場合,家庭裁判所は,本人の財産の保全のため特に必要があるときは,申立てにより,後見等についての審判が効力を生ずるまでの間,本人の財産上の行為について,上記の財産管理者の後見等を受けることを命ずることができます(後見命令。保佐命令,補助命令もあります)。
後見命令等は,財産管理者に取消権を行使できるようにするものです。
成年後見人等と同じように代理権を行使することができるようにするものではありません。
財産管理者の権限や後見命令が発せられた場合に財産管理者ができることは,限られていますので,代理権のある後見人等が活動するのと同じように考えて行動できないことに注意が必要です。
ウ 成年後見等開始の審判がされるまでの期間は短縮されてきていますので,多くの場合は,保全処分をしなくても後見等開始審判を早期に出すことで対応できる場合が多いといえます。
後見等が開始するまでに対応できる方法があれば,これによることも考えられます。
例えば,金融機関に対して,後見申立がされていることを伝えて第三者からの払戻請求に応じないように申し入れをしたり,介護サービスを行政の措置により手配してもらうことです。
これらの緊急の対応をしつつ,後見等開始審判がされて後見人等が選任されるのを待つこともあります。
保全処分は現在はそれほど多く利用されていませんが,それでも保全の必要がある場合に,後見人等の選任に時間がかかるなどの事情があれば躊躇なく保全決定がされることが必要になります。
※次回の掲載日は、2月28日前後を予定しております。
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