現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第30回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
介護事故
被後見人等が入所施設や自宅で介護サービスを受けているときに事故に遭うことがあります。一般にこのような事故は介護事故と呼ばれ,多いのは転倒,転落,誤嚥,のど詰め・窒息などです。大ごとにならないものから死亡という深刻な事態になるものまで様々な態様の事故があります。
被後見人等が介護事故に遭った場合,事実関係が分からないと何をどう考えていいか分からないので,事実関係を知ることが事故発生の場合に最初にすべきことになります。しかし,事故の事実関係や原因が分かる資料はサービス事業者側にあることがほとんどで,後見人等や家族はこれらの資料なしに事故の事実関係や発生原因を把握することは困難です。
介護事故の事実関係や原因を調べる方法としてまず考えられるのは,事業者に直接事情を聞くことです。その際,介護サービス記録やサービス内容についての協議記録,さらに事故報告書などを提供してもらうことが考えられます。また,事情を聞いたことを記録しておくと,時間が経って話の内容が変わってきたときに,その都度どのような説明を受けたか確認することができます。
事業者が十分な説明をしない場合,また,記録の書き換えをするのではないかと疑われる事情がある場合などは,裁判所に申立てて証拠保全してもらうことができます。証拠保全は,裁判所が相手の事務所まで出向いて,必要な資料をコピーし,これにより記録の偽造を防ぎます。相手の対応に誠意がなく記録の書き換えなどが疑われる場合は,すみやかに証拠保全の手続を取っておくのがよいと思われます。
介護事故について事業者のサービス提供に問題があったと考えられる場合は,各都道府県に1団体ある国民健康保険団体連合会(国保連)や都道府県社会福祉協議会(社協)に設置されている運営適正化委員会に苦情申出をして調査してもらう方法もあります。国保連は介護保険サービス(高齢者)についてのみの苦情を取り扱い,社協は福祉サービス(高齢者だけでなく,障がい者,児童も)についての苦情を取り扱います。
介護事故について事業者に過失等の責任があると考えられる場合は,交渉して損害賠償をしてもらうことになります。後見人等は,財産管理の権限を有していますから,本人が介護事故に遭った場合に,事業者に損害賠償請求の示談交渉をしたり,相手と示談が成立しない場合に訴訟提起することは後見人等の職務に含まれます。法律の専門家でない人が後見人等の場合は,弁護士に依頼して訴訟することもできます。
介護事故に遭えば,本人が受けるダメージも大きく,事業者も経済的に,また職員の負担も大きく,損失は計り知れなくなります。そのようなことにならないために,普段から事故が発生しないよう予防に努めることが大切と言えます。事業者は,本人の特性を十分に把握し,施設のサービス提供の人的,物的環境に問題がないかをヒヤリ・ハット報告書などでチェックを行って事故防止の努力を積み重ねておくことが必要になります。
※次回の掲載日は、11月30日前後を予定しております。
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