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提携士業情報(成年後見制度55)
2021.08.02 更新

現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。

今回は第55回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。

 

 

 

 

Q&A成年後見

 

【質問】 

 

80歳代の男性です。本人は市営住宅で1人暮らしをしていましたが,数年前から近隣住⺠から市に「本⼈がアルコール依存症による粗暴な⾔動や⾏動があり対応に困っている」との通報が繰り返しされるようになりました。市の職員が⾃宅を訪問し福祉サービスの利⽤を提案しましたが本⼈は拒否しました。その後も市の職員が継続して関わり,最近になりようやく要介護4の認定を受け福祉サービスの利⽤が始まりました。本⼈はヘルパー等を利⽤して市営住宅で1人暮らしを続けていますが,アルコール依存症による認知症の進⾏によって記憶障害や階段の移動もできなくなり⾝体機能の低下が顕著となり在宅での⽣活が難しくなってきました。

本⼈の⽣活を維持していくためには⾦銭管理や福祉サービスの一層の利⽤が必要で,将来的には施設⼊所の可能性もあります。主治医は本人が保佐相当との診断書を作成しましたが,本人は代理権をつけることについて同意しません。本人には子ども2人がいますが,いずれも関わりを拒否しています。

本人のこれからの生活についてどのように考えればいいでしょうか。

 

 

【回答】

 

1 本人は現在の在宅生活が難しくなってきているようですが,認知症のためにそのような自覚が持てなくなってきているのかも知れません。

現在の在宅生活を維持するにはどれだけの福祉サービスを利用する必要があるか,また,施設に入所するのであればどの施設に入所するかなどを本人が選択しサービス利用契約を結ぶ必要がありますが,本人は認知能力,身体機能が低下してきており,自分でこれらの選択や契約をすることが難しくなってきています。施設入所を選んだとしても本人の粗暴な言動や行動のために退所を求められることもあり得ますから,在宅生活が難しいから施設入所を考えれば終わりとなるわけでもありません。

預貯金を出し入れできなければ日常生活は難しいといえます。本人のためにお金の管理をしてくれる知人でもいれば生活は可能かも知れませんが,その知人は本人のために何の権限を持っているわけでもなく,ときには本人のお金を使い込まないとも限りません。預貯金の出し入れをどうやってするかは当面の大きな課題になります。

 

2 本人のために預貯金をきちんと管理し,福祉サービスの契約などをしてくれる人として,本人には家庭裁判所が選任する後見人等(今回のケースであれば保佐人)がつくのが望ましい状況にあるといえます。家庭裁判所は保佐人の監督をします。

 

3 成年後見制度を利用するには申立てが必要ですが,申立てできる人は法律に定められている人に限られ,本件では子どもが申立てできますが,おそらくしないことになるでしょう。本人も申立てできますが,本人は後見制度の利用に乗り気ではないようです。本人のために誰も申立てをしないと本人は在宅生活が難しくなっていく中で支援が受けられずに暮らすことが予想されます。このような場合,本人の福祉を図るため特に必要があるときは市町村長が申立てできると定められていますので,今回のケースは市町村長申立てが検討されることになります。市町村長申立てをするには,本人の子どもに申立ての意向があるかを確認し,申立てる意思はないとの回答,あるいは無回答であれば市町村長申立が行われることになります。

 

4 本人には保佐相当という診断がされています。保佐の場合は,本人が同意しなくても同意権・取消権が保佐人に当然に付与されます。しかし,代理権は本人が同意しないと付与されません。代理権がないと,保佐人は本人に代わって預貯金の出し入れをしたり,福祉サービスの利用契約を結んだりできません。本件では本人が代理権の付与に同意していないので,代理権は保佐人に付与されないことになると思われます。

後見の場合は,本人の同意の有無に関係なく,後見人に取消権,代理権が付与されますが,保佐の場合は,本人が判断できる能力が後見の場合よりもまだあるので,本人の同意なしに代理権を付与できないことになっています。保佐よりもさらに判断能力がある補助の場合は,代理権だけでなく同意権・取消権を補助人に付与するのにも本人の同意が必要です。のみならず,補助の開始自体も本人の同意が必要です。本人の判断能力がある場合は,周囲の人がいくら本人には成年後見制度の利用が必要と考えても,個人の尊厳の考えから本人の意思が尊重されるのです。

本件では,市の職員が粘り強く関わり,ようやく要介護認定を受け,福祉サービスの利用を受ける決意を本人はしたようですが,保佐制度を利用し,代理権を保佐人に付することには本人は抵抗し,同意するには至っていません。

 

5 代理権のない保佐人は,同意権・取消権しかなく,預貯金の管理や福祉サービスの契約などを本人に代わって結ぶことはできません。財産管理をしたり福祉サービスの契約をすることなどは本人が自分ですることになります。

保佐人は,代理権がないと何もすることがないようにも見えますが,本人の生活状況の確認(見守り),課題の整理,福祉関係者と連携をとり福祉・介護サービスの把握などの対応を行うことは可能でしょう。時間をかけて本人に寄り添えば,福祉サービスを本人が受け入れたのと同じように財産管理などを自分ですることの困難を自覚するようになり,保佐人にしてもらいたいと考えるようになるかも知れません。そうなれば,代理権付与を家庭裁判所に申立てて代理権付与決定を得ることになります。

 代理権がないからといって保佐人は何もできないわけではなく,時間をかけて本人に関わることで本人の信頼を得られれば本人の本音を引き出すこともでき,本人が望む生活の実現に向けて共に進むことも可能になります。本人がどうしても代理権付与に同意しないこともあり得ますので,ケースにより結論は分かれるといえます。

 

 

 

 

※次回の掲載日は、8月31日前後を予定しております。

法律関係でお困りでしたら、提携している弁護士をご紹介いたします。

お困りの際には、まず木村泰文税理士事務所へご連絡くださいませ。

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TEL:06-6910-8788 FAX:06-6910-8577
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