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提携士業情報(成年後見制度57)
2021.09.30 更新

現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。

今回は第57回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。

 

 

 

 

Q&A成年後見

 

【質問】 

本人は70歳の男性です。アパートを所有し自分で管理していましたが,アパートの老朽化が進み入居率がだんだん下がってきたので長男と相談してアパートを取り壊してマンションに建て替えることを計画しました。

アパートを取り壊そうとした矢先に本人が脳梗塞で倒れ,左半身麻痺と認知機能の低下が生じ,判断能力も相当低下してきて長男との会話が難しくなってきました。

アパートの入居者から雨漏りなどの苦情が出され入居者もその後さらに減ったため,長男はマンション建築を急いで行いたいと思い,建築業者にアパートの取り壊しとマンション建設を依頼しましたが,建築業者から「父親名義のものを本人の同意なしで取り壊したり,土地に建物を建築できません」と言われました。

どうすればいいでしょうか。

 

 

【回答】

1 本人の判断能力が低下して物事を決められなくなると,本人の財産は長男や家族といえども処分を決めることはできず,本人所有の建物を取り壊したりマンションを新たに建設する契約を建築業者と結ぶこともできません。このままだとマンションの建設計画は進めることができません。

本人が自分で判断して決められない状態にある場合は,家庭裁判所に後見人を選任してもらえば,後見人が法律上の権限(代理権)に基づいて本人に代わって有効に決定することができます。

 しかし,後見人は本人に代わって物事を決めることができますが,この事例で後見人が選ばれた場合,アパートの取り壊しとマンションの建設を後見人が本人に代わって行うことができるかについては少し考えてみる必要があります。

2 仮に,この事例で本人が脳梗塞になって判断能力が低下する前に,アパートの取り壊しとマンション建設について何も意思を表明していなかったするとどうでしょう。

アパートの取り壊しとマンション建設には資金が必要で本人は大きな借金を負う可能性があります。後見人がマンションを建設した場合,もしマンション入居者が想定どおりに入らなければ賃料収入だけではローン返済ができなくなり,万一の場合は本人に大きな借金が残りかねません。マンション建設は本人の生活の安定に大きなリスク要因になる可能性があります(本人に借金を上回るもっと多くの資産があれば別かも知れません)。そのようなことをしなくても,アパートを売却して売買代金で本人の生活設計をすれば本人の暮らしを維持向上させるに足りるお金を得ることができるとも考えられますから,後見人の判断でマンション建設まで行ってよいかという疑問があります。

後見人に代理権が与えられるといっても,後見人の職務は,判断能力が不十分な本人が安定した暮らしができるよう財産の管理や身上面の対応をすることを目的としますから,後見人が本人の財産を株式や先物取引に投資したりして資産運用することはできないと考えられています。後見人の代理権にも一定の限界があるということです。

マンション建設も冒険的な資産運用として後見人の職務権限逸脱行為とみなされる可能性があり,万一本人に損害が発生した場合は,後見人は注意義務違反を問われ本人に損害賠償しなければならなくなる可能性があります。

3 この事例では,本人は判断能力が低下する前に,マンション建設の意思を表明していました。このような本人の意思が表明されていた場合に,本人の意思を評価して後見事務に反映させてもいいでしょうか。

もしかすると本人は,マンション建設をすることで大きな借金を自分に残し,相続税負担を少なくして不動産を長男に相続させる目的があったかも知れません。成年後見制度を相続対策に利用することは制度の利用趣旨が違っていることになりますが,本人がこのようなつもりでマンション建設を考えていたとするとその意思の実現を後見人がしてあげることはいけないのでしょうか。

後見人の職務は本人がどう暮らせるかということだけを考えて,財産管理などをすればよいと考えれば,本人の意思がどうであったかに関わらず,財産関係や本人の生活の安定だけ考えればいいことになります。しかし,後見人は,本人が財産の管理も含めてどのような暮らしができるようになるかを考えることと同時に,本人の意思の尊重にも配慮することが法律に定められています。

本人に十分な判断能力がある時期であれば,多少冒険的であっても本人はマンション建設をした可能性があります。また相続税対策のために,本人が自分の責任においてマンション建築に取り組んだ可能性もあり得ます。本人の判断能力が低下した後に選任された後見人は,本人の意思を尊重して,本人はどのようにしたいと思っていたのかを考え,本人のこのような思いをどこまで実現していけばよいのか,本人の思いを実現したときに本人の生活に重大な影響を与えることにならないのかを考えながら本人意思の実現を考えていくことになると考えられます。その際,後見人は自らの職務権限,注意義務と本人意思の尊重との間では難しい判断を求められることになると考えられます。

後見人がついたからといって,人は合理的な生活をしなければならないわけではなく,これまでと同じように不合理で矛盾に満ちた暮らしをしていいはずです。そうであってこそ,その人がその人らしく生きているといえるように思います。

この事例では,本人の思い,意思が確認でき,本人の生活が重大な影響を受けるとまではいえないのであれば,他の人からみて不合理と思える内容であっても,本人の思い,意思に沿って,後見人が本人を代理してマンション建設をすることもありうるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

※次回の掲載日は、10月31日前後を予定しております。

法律関係でお困りでしたら、提携している弁護士をご紹介いたします。

お困りの際には、まず木村泰文税理士事務所へご連絡くださいませ。

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