


現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第67回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
Q&A成年後見
【質問】
本人は70歳の男性。認知症で要介護4。介護保険サービスを受けながら妻と2人で暮らしています。本人の年金収入が夫婦の収入の全てです。本人は金銭の管理をすることができず妻が金銭管理をしています。近所に住む長男は商売をしていましたが,景気が悪くなり商売の資金が足りないと言って本人の銀行預金通帳とキャッシュカードを持ち帰ってしまいました。今日は1月20日ですが,2月15日に入る年金を長男が取ってしまうと夫婦は生活できなくなります。
どうすればいいでしょうか。
【回答】
1 後見等開始の審判の申立てをしても,審判の確定までには時間がかかります。裁判所の統計では申立てから審判までにかかる時間は2か月以内が70%,3か月以内だと85%となっています。しかしこれは申立てから審判までの時間ですので,申立てまでにかかる時間を別に考えておく必要があります。戸籍謄本や後見申立用の診断書等を手に入れ,申立書を作成する時間が必要です。また,審判が出て当事者に審判書が送られた後,2週間の異議申出期間があり,この期間が過ぎないと審判は確定しませんから,この期間も頭に入れておく必要があります。
本事例では,1月20日から2月15日までの間に何か対応できることはないかが問題になります。後見申立をしても確定までに時間がかかるので,確定を待っていては長男が本人の年金を2月分,4月分と引き出してしまいかねません。
2 これに対応するための制度として「審判前の保全処分」があります。
審判前の保全処分の申立ては,後見等開始の申立てと同時に行う必要がありますので,遅くても2月8日ころまでには後見等開始の申立てをする必要があります。後見等開始の申立書と審判前の保全処分申立書を作成し,本人の戸籍謄本や診断書,福祉関係者に作成してもらう本人情報シート,さらに後見人等候補者の戸籍謄本などの必要書類を取りそろえて家庭裁判所に提出します。
審判前の保全処分の申立てがあると,家庭裁判所は後見等の審判が確定するまでの間,本人の財産管理や身上保護のために必要があるときは,①財産管理者の選任、②関係人に対する本人の生活・療養看護・財産管理に関する事項の指示,③本人に財産管理者の後見等を受けることを命じる後見・保佐・補助命令等の発令をすることができます。
3 本事例では,審判前の保全処分として①の財産管理者選任の申立てが行われることになります。財産管理者がすることができるのは,本人の財産についての管理行為(保存行為および性質を変えない範囲内の利用・改良行為)です。管理行為は保存することが中心になりますから,たとえば銀行預金を引き出すなどの処分行為を行うことはできません。銀行預金を引き出して本人の生活費のために使用するには,後見人等が選任されその審判が確定した後に後見人等が行うことになります。
財産管理者が本人の財産を管理するというのは,長男が本人の預貯金を引き出すのを止めることになります。
財産管理者は預貯金の引き出しを止めることができますが,この方法以外に考えられることとしては,支援者が本人と一緒に銀行に行き,銀行に預貯金の支払を止めるよう申し入れることが考えられます。銀行は,本人以外の第三者が行っても支払われることを止めないと思いますが,本人が申し入れるのですから,支払を止めざるを得ないと考えられます。本人がこのような申し入れができる判断能力があれば試みることができます。
※次回の掲載日は、10月31日前後を予定しております。
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