現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第70回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
Q&A成年後見
【質問】
1人暮らしの80歳女性。子どもは遠方に住んでいます。認知症の症状が進んでおり,要介護2で週3回デイサービスに通っています。最近,デイサービスのほかに訪問介護も併せて利用することになり,介護ヘルパーが自宅に行ったところ,未使用と思われるたくさんの着物がタンスにしまわれていることが分かりました。本人の銀行預金を見せてもらったところ,預金がほとんどなくなっていることも分かりました。
どうすればいいでしょうか。
【回答】
1 様々な形で呉服展示会に誘われ,会場に行くと呉服を買わされてその後も展示会に誘い,次々と商品を買わせる消費者被害が発生しています。勧誘する業者は1社ではなく複数の業者になることもあります。本人が「お金がないからもう買えない」,「呉服はたくさん持っているからいらない」と言っても,担当の販売員が本人と密接な関係性を作り,これにつけ込んで断れない雰囲気にして商品を売りつけたりします。高齢者の中には孤独感を抱いている人もおり,そのような心理を巧みに利用した商法といえます。
2 本人が以前から自分の意思で何着も着物を買っていたのであれば,それは本人の意思に沿うものと評価できますが,買うつもりもなく,通常買うはずもない呉服を理由もなく多量に買わされていた場合(過量販売),特定商取引法は,契約後1年以内であれば,消費者は契約を解除できるとしています。消費者被害については,クーリング・オフという契約解除の制度があり,契約書面を受け取ってから8日以内であればクーリング・オフできるとされていますが,過量販売の解除の期間は1年ありますから,契約したときから1年以内に被害が発見されれば解除が可能です。解除できれば商品を返し,代金を返してもらうことができます。
3 本件では,本人がどのようにして着物を買うことになったのか,その事情により過量販売であると認定できれば契約解除が可能になります。
契約解除という法的な行為をするのは本人しかできず,周囲の支援者が自分の名前で契約解除通知を販売会社に送ってもそれは効力がありません。あくまでも本人が本人の名前で通知する必要があります。
本人が認知症のために対応方法や契約解除通知を送ることの意味が理解できにくいというのであれば,成年後見制度の利用が必要になります。成年後見人等は本人の代理人として,契約解除通知を送ることができます。本人の子どもが成年後見制度開始の申立てを行い(子どもが申立てをしないというのであれば,市町村長申立てが行われます),選任された後見人等が販売会社に特定商取引法に基づく契約解除通知を送り,売買代金の取り戻しを請求します。
なお,後見人等は,後見人等の権限として,本人がした契約を取り消すことができますが,取消権を行使できるのは,後見等が開始した後に本人が行った契約についてであり,後見等が開始する前に本人がした行為は,基本的に取り消しはできません。
※次回の掲載日は、4月30日前後を予定しております。
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