現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第75回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
Q&A成年後見
【質問】
本人は75歳の女性で,自宅で1人暮らしをしていますが,認知症が進んでおり1人暮らしが難しくなってきています。隣町に長女夫婦が住んでおり,夫婦で母と同居して介護をしたいと考えています。本人の自宅土地建物は本人名義ですが,築後50年を経ており,本人の介護をするためには風呂やトイレ,廊下などにバリアフリー工事が必要ですし,耐震工事も必要と考えられます。バリアフリー工事,耐震工事などに助成金,補助金が出ますので組み合わせるとかなりの金額にはなりますが,本人負担分もあります。本人にも長女夫婦にも工事費用の自己負担分を出せる余裕はなく,借り入れて用意するしかありません。
また,本人の長男が飲食業の仕事をしていますが,事業資金を銀行から融資してもらうのに本人の自宅を担保に入れてもらえないかと言っています。
どうすればいいでしょうか。
【回答】
1 バリアフリー工事,耐震工事などをするについて,その契約は本人が結ばなければなりません。本人が銀行などから工事のためのお金を借り入れるのであれば,金銭の借入の契約もしなければなりません。様々な契約を結ぶ必要がありますが,本人の認知症が進んで判断能⼒が不⼗分になり契約の理解が難しくなっていれば,本人は契約を結ぶことができないと評価され,相手から契約を結んでもらえません(工事もしてもらえなければ銀行借入もできません)。長女夫婦が契約することも可能ですが,その場合は,長女夫婦が工事依頼者であり,借金の借主になり,お金についての責任は長女夫婦が負担することになります。
本人の自宅ですので本人が契約して責任も負担する方法を考えると,本人が認知症のために判断能力を失っている,あるいは不十分である場合は,本人に後見人等を選任してもらい,後⾒⼈等が本人と話をしながら本人を代理して契約を結ぶことになります。
2 後見人等は本人中心に考え,本人はどのような暮らしを望んでいるのか,自宅で暮らすのかそれとも施設入所を希望しているのかなどを本人に選んでもらいます。
本人の希望が自宅で長女夫婦の介助を受けながら暮らすということであれば,1人暮らしは難しいと言われているので,どのようにすれば暮らすことができるかを考え,本人の介助の方法,本人が自宅で暮らすために必要な福祉サービス,バリアフリー工事や耐震工事等の検討を行って本人の希望の実現に向けてできる限りの努力が行われます。工事をする費用を本人名で銀行から借り入れできなければ,工事はせずに本人が自宅で暮らすことができないかその方法を検討したりもします。
そうは言っても,本人が希望する在宅生活を実現するためにどうしても必要なこと,たとえば建物が老朽化して建物の補強をしないと住むのが難しいような場合,本人が補修費を用意することができなければ本人が希望する生活が客観的に実現不可能と考えられ,本人が希望しても現実には実現が難しいということもあり得ます。
3 本人の長男の事業資金貸付のために本人の不動産に担保権を設定することは,後見人等の職務の範囲にあるとはいえません。長男から求められても担保権を設定することはできないと考えられます。
しかし,本人が長男を気にかけ,事業のための援助をしてあげたいと思っているのであれば,その気持ちも大切にすることが大切です。
後見人等としては,本人に長男の事業のことや担保権設定をしてもらいたいとの希望があること,担保権の意味などを分かりやすく伝え,本人がそのことを理解しているかどうかを確認しながら,その上で本人の真意として長男の事業資金借入のために自宅に担保権設定することを認めるというのであれば,それは本人の意思として本人の自宅に担保権を設定することも可能と考えられます。この場合に本人の真意の確認は,他の支援者も合わせたチームで慎重に行うことが必要と考えられます。
※次回の掲載日は、9月30日前後を予定しております。
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