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提携士業情報(成年後見制度78)
2023.12.01 更新

現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。

今回は第78回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。

 

 

 

 

Q&A成年後見

 

【質問】

本人は70歳代の女性でアルツハイマー型認知症の診断を受けています。3か月前から精神的に不安定な状態となり精神科病院に入院しています。本人には遠くに住んでいる長女が1人いるだけでほかに親族はいません。長女とは何年も連絡をしていません。本人は複数のクレジット業者にかなりの額の借金があり,債権者から債権取立の書面が自宅に届いています。

病院は本人の精神症状が安定してきたので退院してはどうかと考えましたが,自宅で1人暮らしするのは難しいので成年後見制度を利用して施設に入所することを本人に勧めました。しかし,本人は了解しません。本人は認知症の検査では高い点が出ていますが,娘夫婦が毎日面会に来てくれているとか生活に困っていなかったので借金はしていないなど妄想や現実認識に乏しいことを話すので担当医師は後見相当と判断しています。

どうすればいいでしょうか。

 

 

【回答】

1 成年後見の審判には成年後見用の診断書が必要です。家庭裁判所が後見開始,保佐開始の審判をするには診断書のほかに本人の精神の状況について鑑定をすることも必要とされています。ただ,鑑定の必要がないと認められる場合には鑑定しないで決定できるとされています(補助開始は本人の同意の有無により決まりますから鑑定は必要ありません)。ただ,鑑定は令和3年度で申立て全体の5.5%しか行われておらず,原則と例外が逆になっています。

この事例では,本人は妄想や現実認識に乏しく,担当医師は本人の判断能力が失われていると考え後見相当と診断しましたが,認知症の検査では高い点を示しています。家庭裁判所はこのような場合は鑑定を行い,場合によっては保佐開始決定がされることになるかも知れません。

 

2 成年後見制度は,精神上の障がいがあるために判断能力を失ったり低下している人のために,本人に代わって財産管理などをする制度ですが,よく考えてみると後見人等は本人に何もさせずに本人の全てのことをしてしまいます。後見制度は,本人の能力を制限して本人を保護しようとする制度なのです。

そのような点から考えると,後見は本人の能力制限が最も大きく,保佐,補助の順に制限の強さは弱くなります。後見人は包括的に代理権と取消権を持ち,日常生活上の行為を除いて本人のあらゆる行為について代理し,取り消します。保佐は後見に次いで能力制限が強く,保佐人は重要な行為に限って同意権・取消権を持ち,代理権は本人が同意したものに限って持ちます。本人が同意しないと保佐人は代理権を持つことができません。補助は能力制限が最も弱く,補助人が持つ同意権・取消権は保佐人と同じ重要な行為の範囲で本人が同意したものに限り,代理権も本人が同意したものに限ります。

後見,保佐は,本人が同意しなくても開始決定されますが,補助は開始そのものにも本人の同意が必要で,本人が同意しなければ補助が開始しません。

このように後見人,保佐人,補助人が持つ権限に違いがあるのは,本人の能力が関係しています。後見は本人が合理的に物を判断する能力がない人が対象であり,保佐は判断する能力が著しく不十分な人が対象であり,補助は判断する能力が不十分な人が対象になるというように判断能力の程度に違いがあるから,後見人等が持つ権限もこれに応じて分けられているのです。

 

3 後見人は包括的に権限があるので,後見人に選任される方が何でもでき活動しやすいと思われるかも知れません。保佐人の場合は,本人が代理権を保佐人に付与することに同意しなければ保佐人は代理権を持てず,重要な行為についての同意権・取消権を持つだけになりますから,保佐人は思うことができないと感じられるかも知れません。

しかし,後見人が自由に行動できるということは,その反面,本人にとっては行動や決定が強く制限されることになります。本人が決められるところは本人に決めてもらい,決められない部分だけ後見人,保佐人などが手助けして,本人の能力制限はできるだけしないようにするのが個人の尊厳の考えからすると望ましいといえます。

  後見人,保佐人としては,権限があるからといって本人に何も聞かずに決めるのではなく,本人と話をして本人にどうしたいのかを聞き,本人の意思を実現する方向で検討することが大切のように思います。

  この事例では,本人が後見制度の利用に反対しており,しかも認知症検査は高い点になっていますから,家庭裁判所は鑑定をしてその結果,後見ではなく保佐開始決定をするかも知れません。そうなると保佐人に代理権を付与するかどうかは本人の同意が必要になります。仮に本人が代理権を付けることに同意しなければ,保佐人は代理権を持つことができず,同意権・取消権しか持つことができません。この場合,本人には債権者がいるようですが,債権者との交渉は本人がしながら保佐人はその結果に同意することを通して債務整理に関わることになる可能性があります。本人も交渉が難しければ保佐人にアドバイスを受けながら対応することになるかも知れません。それが難しいとしてもそれは本人が選択した結果であり,やむを得ないといえます。

 

 

 

 

 

 

 

 

※次回の掲載日は、12月31日前後を予定しております。

法律関係でお困りでしたら、提携している弁護士をご紹介いたします。

お困りの際には、まず木村泰文税理士事務所へご連絡くださいませ。

〒540-0003
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