現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第84回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
Q&A成年後見
【質問】
80代男性。自分の所有建物で1人暮らしをしています。妻は数年前に死別し,子どもはなく親戚とは互いに連絡がありません。本人は,以前は大工の仕事をしており,仕事で貯めたお金と国民年金で暮らしています。
本人宅の近隣の人から地域包括支援センターに本人の自宅はゴミ屋敷のようになっており,火の始末が心配と通報がありました。地域包括支援センターの職員が訪問したところ,自宅内は布団が敷いたままになっており,その周りにコンビニで買ってきて食べたと思われるカップ容器などが散乱し足の踏み場もない状態でした。食器類が洗われないままで流しにたくさん置いてありました。入浴もできていない様子でした
地域包括支援センターの職員は本人と話をして週に4回,昼と夕に宅配の弁当を取って少しでも栄養のバランスのある食事ができるようにし,家の片付けも手伝って入浴するように勧め,衛生的で健康な生活ができるように手配しました。
本人はある日,コンビニへ買い物に出掛け,店内で倒れて救急搬送され脳梗塞と診断されました。リハビリをして車椅子に座って移動できるまでに回復しましたが,右半身の障がいと軽度の認知症が残りました。医師は,在宅生活は難しいと言っており,退院後は施設入所を考えざるを得ませんが,その際の入所手続をしてくれる人がいません。
どうすればいいでしょうか。
【回答】
1 私たちが普段生活しているときは金銭管理(お金の引き出し,買い物),調理,食事,掃除,入浴,トイレなどが問題なくできていますが,高齢になって判断能力などが低下してくるとこれらの行動をすることが難しくなってきます。判断能力が低下してもすぐに全てのことができなくなるわけではありませんが,支障が生じる内容によりその人の生活に様々な影響が出てきます。キャッシュカードでお金を引き出すことができなくなれば買い物や支払ができなくなり,生活を維持することが難しくなります。本人に代わってお金の管理ができる人が必要になります。
お金の管理ができても日常生活に支障が出る人もいます。調理,掃除や入浴ができていた人も能力が低下してくると徐々にできなくなり,コンビニで食事を買ったりしていても部屋の片付けができずにゴミが溜まっていったりします。そのうちに現在の自分の処理能力を超えてゴミが部屋中にあふれたり何日も入浴せずに暮らしたりするようになります。このような暮らしを続けているうちに病気入院など何かの大きなきっかけがあって生活バランスがくずれると,それからはこれまでの生活を維持することができなくなり,周囲の支援がないと在宅生活を自力で送ることが難しくなります。
2 本人の生活支援の仕組みとして高齢者の場合は介護保険制度があり,障がい者の場合は障がい者総合支援法に基づく支援制度があります。日常的な金銭管理については,都道府県社協が運営する日常生活自立支援事業などがあります。これらの制度を利用することで在宅生活を維持できないかを高齢者の場合はケアマネジャー,障がい者の場合は相談支援専門員が関わり検討することになります。
周囲の支援を受けながら在宅生活を続けていっても,いずれそれも難しくなってくるときがくるかも知れません。そうなると,本人に施設入所するかどうか聞くことになります。本人が意思決定できない場合は本人に代わって在宅生活を続けるか施設入所するかを決めることが必要になります。
施設入所などの契約問題や本人に代わって意思決定を行うなどケアマネジャーや相談支援専門員が関わることにも限界が生じてくると,成年後見制度を利用して後見人等が関わることが必要になってきます。成年後見制度の申立をするには本人もできますが,本人ができる能力がない場合は親族などが行います。親族など後見申立をする人がいない場合は市町村長申立をしてもらうことになります。
地域で在宅生活が難しくなった高齢者などでこのようにして成年後見制度の利用に至ることはよくあります。
※次回の掲載日は、8月31日前後を予定しております。
法律関係でお困りでしたら、提携している弁護士をご紹介いたします。
お困りの際には、まず木村泰文税理士事務所へご連絡くださいませ。