現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第86回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
Q&A成年後見
【質問】
50歳の男性。20年近く会社で働いていましたが,40歳のときに統合失調症を発症しました。入退院を繰り返し3年後に退職しました。以後はアパートで1人暮らしをしています。両親とは別に暮らしており,兄弟はいません。退職当時は障害基礎年金と退職金で暮らしていましたが,退職金も使い果たし,その後は生活保護も受けながら暮らしていました。数年前から妄想,暴言がひどくなってアパートの住人ともトラブルが続くようになり,警察に通報が繰り返されました。父親が同意して2年前に精神科病院に医療保護入院となりました。入院前の生活状況は,入ったお金をすぐに使い果たし,精神科への通院もできていなかったため服薬もできず病状が悪化していたようです。
病状も安定してきたので主治医は退院を考え,退院後の生活支援プログラムを検討することになりました。
本人の退院後の生活についてどのようなことを考えていく必要があるでしょうか。
【回答】
本人の病状が安定してきたといっても,1人で暮らしていくのは難しそうです。しかし,入院治療する必要のない人が病院に閉じ込められるのは行動の自由,個人の尊厳が害されることになります。精神科病院では様々な理由から入院治療の必要がないのに長期入院している患者がいると言われています。日本の精神科病院の平均在院日数は令和4年で299.8日となっており,何十年も入院している人もいます。イギリスの平均在院日数が30日未満であることと比べると日本の入院日数は長期になっています。
退院して社会で生活しているとまた同じ状況になって入退院を繰り返すことになる可能性もありますので,退院後の生活の支援が欠かせません。関係者が集まってチームで支援することが必要です。住まいは本人の希望を聞きながら元のアパートに戻るかグループホームに入所するかなどを決めていきます。同時に,本人の判断能力の状況を考えて財産管理の支援方法も検討されます。本人に一定の判断能力があれば市町村の社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業の利用が考えられます。判断能力が不十分であればその程度に応じて補助,保佐,後見などの法定後見制度を利用することになります。日常生活自立支援事業や補助,保佐などは金銭管理をしてもらうことについて本人が同意することが必要になります。
退院後は,相談支援事業所が中心になり,担当医,病院の相談室医療ソーシャルワーカー(MSW),居宅介護事業所,訪問看護師などが集まり支援方法を検討します。財産管理を行う機関もこのチームに入り,後見人等が選任されていれば後見人等もこのチームに入ります。
本人は自宅やグループホームで暮らしながら,平日の昼間は就労したり地域活動支援センターでピアカウンセリングを受けたり精神保健福祉士との面談を行います。退院して地域で暮らすようになっても本人が通院や服薬を怠ると不安感や妄想が出て後見人が自分のお金を取り込んでいるから返せと言ってきたりすることもあります。このようなことがあると相談支援事業所,病院,訪問看護師と連絡を取り,訪問看護の回数を増やして服薬を忘れないようにしたり受診を確実にする対応を取ったりして病状の安定を図ります。
本人の支援はチームで行い,支援チームのコーディネートは通常は相談支援事業所が行います。後見人等はチームの一員として本人支援の活動をします。
※次回の掲載日は、10月31日前後を予定しております。
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