現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第89回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
Q&A成年後見
【質問】
本人は80歳の女性です。本人は認知症と診断されており,自宅で1人暮らしするのが難しくなってきましたので介護付き有料⽼⼈ホームに入所することになりました。ホームの入居一時金は1000万円必要です。本人名義の自宅を売り定期預⾦を解約してお金を用意することを考えましたが,本人は認知症があるために意思確認が十分にできず,不動産の売却,預金の解約が難しくなっています。
どうすればいいでしょうか。
【回答】
本人の財産を処分するには本人自らが行う必要があり,家族が本人の意思に関わりなく勝手に処分することはできません。銀行預金の解約引き出しも本人が行う必要があります。本人の意思確認ができなければ財産の処分はできません。有料老人ホームに入所するのも本人が契約する必要があり,本人に判断能力がないと入所契約も結べないことになります。もっとも,家族が本人に代わって本人名を施設入所契約に署名し,施設の方で了解する現実の取扱はあるようですが,厳密に言うと,このような契約は効力を持ちません。
判断能力のない本人の財産を処分したり定期預金の解約をするには本人の判断能力を法律的に補う人が必要です。そのための制度が成年後見制度です。成年後見人等の選任には,本人の判断能力についての診断書などを用意して申し立てることが必要になります。申立ての準備に数か月かかり,申立後も審理に2,3か月かかります。そのため,自宅を売却したり定期預金の解約をしようとしても4,5か月は待つ必要があります。
後見等が開始するまでに時間がかかると,せっかく見つけた有料老人ホームへの入所ができなくなるかも知れません。そのような場合は,少しでも早く手続を進めるために,後見人等の選任審判の申立と同時に審判前の保全処分の申立をして,これを利用できないかということが考えられます。
審判前の保全処分は,財産管理者の選任と後見命令等の2つが家事事件手続法に定められています。財産管理者は後見等が開始するまでの間,本人の財産を管理し,財産の保存行為(保存行為ですので預金を確保できますが,預金の引出などの処分をすることはできません)を行います。後見命令等は,本人の財産の保全のため,特に必要があるときに財産管理者の後見を受けることが命じられるものです。後見命令等が出ると,後見人等が選任されたと同じことになりますが,財産の保全のために特に必要があるときに出される命令なので,本件のように不動産を処分したり定期預金を解約して得たお金を有料老人ホームの入所費用に充てる行為は,財産の保全のためと言うのは難しいと考えられ,本件の場合は後見人等が選任されるまで待つしかないように思われます。
※次回の掲載日は、1月31日前後を予定しております。
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