現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第32回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
後見開始前からある株式の取扱
1 後見が開始した時点で,本人が株式を所有していた場合,この株式は本人が自らの判断で買付,保有していたものですから,後見人は本人の意思を尊重して,株式を保有し続ければよく,売ったり買ったりを繰り返して財産を殖やす必要はありません。株式を売買して財産を殖やすことは後見人の職務ではありません。
ただ,保有している株式を発行している会社に株価の急落を招く重大な出来事が起きたような場合,後見人にとっては,自己決定の尊重よりも資産の保全の要請が強く求められると考えられますので,できるだけ速やかに株式の処分を行うべきです。また,本人の生活費が不足してきた場合に株式を売却して現金を用意することも後見人としては職務として行う必要があります。
2 株式は,有価証券のペーパーレス化が実施され,株券は発行されなくなっています。株式は保管振替機構に預けられており,株式を取得した保有者が金融機関に開設した口座(振替口座)に記録されることにより,証券会社から株主通知がされ,保管振替機構で名義書換が行われ,配当金や株式分割の新株を受ける権利等株主としての権利が確保されるようになっています。このような手続きから漏れている株式もある可能性があり,本人が保有している株式が保管振替機構に登録されているかどうか確認しておく必要があります。
3 後見人は被後見人の包括的代理人であり,被後見人本人の財産管理行為の全てを行うことができますので,本人に代わって株主総会に出席して議決権を行使することができます。多くの会社では,本人に代わって株主総会に出席できる代理人の資格をその会社の株主に限るとする定款の定めを作っていますが,そのような定款の定めが予定するのは,代理人資格に制限を設けないと,株主総会がかく乱され会社の利益が害されるおそれがあるというところにあると考えられますので,そのようなおそれがない場合は非株主である代理人の議決権行使を拒むことができないと考えられます。この考えに従うと,後見人が被後見人に代わって株主総会で議決権を行使することは,このようなおそれがない場合は認められてよいことになります。
保佐人,補助人の場合は,後見人のような包括的代理権は有していません。特定の法律行為ごとに家庭裁判所から代理権が与えられることになりますから,代理権を記載した目録に「株主権の行使」など株主権行使の代理権を有することが書かれている必要があると考えられます。任意後見人についても同様に,本人と任意後見人予定者との間で,株主権行使の代理権を与える任意後見契約が結ばれている必要があります。
同族会社の株主総会の場合は,創業者等大株主の後見人として議決権を行使する場合,会社の経営を左右しかねない結果にもなります。後見人がこのような場面で議決権を行使することについて制限はないと考えられますが,会社内で経営権をめぐって対立がある場合は,後見人が議決権を行使することで会社の内紛に巻き込まれかねません。このようなことも考えた上での議決権行使が必要となりますが,これは後見人の職務を超えているように考えられます。
※次回の掲載日は、1月31日前後を予定しております。
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