現在、木村泰文税理士事務所では、提携している各士業の先生方を少しでも知って頂くため、先生方からお役に立つ情報を提供して頂き、発信しています。
今回は第34回目として、弁護士の先生から頂いた情報で、「成年後見制度」についてです。
本人宛の郵便物の扱い
1 本人宛には様々な郵便物が届きます。知人からの手紙,役所からの福祉関係の知らせ,金融機関からの取引状況を知らせる通知,ローンやクレジットの請求書などです。
後見人が本人の財産を適切に管理するためには,これらの通知などを確認することが必要と考えられます。
しかし,他人の手紙などの信書を正当な理由なく開けて読むことは犯罪になります(信書開封罪。1年以下の懲役又は20万円以下の罰金)。
破産事件において地方裁判所が選任する破産管財人には,破産者宛ての郵便物を開けて読むことができることが法律に定められていますので,破産管財人は破産者宛ての郵便物を読むことができます。
後見人にはそのような規定がありませんので,後見人は本人宛ての手紙などを勝手に開けて読むことは原則としてできないのです。ただ,後見人の職務は本人の財産の管理をすることにありますら,明らかに財産管理に関すると分かる手紙は,「正当な理由」があるものとして,後見人の財産管理権に基づき,開封して読むことができると考えられます。本人に一定の判断能力があったり,補助や保佐の場合は,本人の同意を得て開けるのが通信の秘密が守られている憲法,刑法の精神に沿った対応と考えられます。
2 本人宛の郵便物で財産管理に関するものを後見人が読むことができるとしても,郵便物が本人の自宅宛に届く場合,後見人は本人のところへ定期的に確認に行ったり,本人の支援者から送ってもらったりしなければなりません。
郵便局に転送届けを出して,後見人の住所や事務所に転送してもらう方法が考えられますが,郵便局の基本的な考え方は,通信の秘密という憲法上の要請があり,破産管財人のように法的に郵便物を開けて読む権限が認められている人に転送はできるが,そのような権限が明記されていない後見人へは転送できないとなっています。
郵便物の転送は,後見人について,2016年(平成28年)から,通信の秘密とバランスを保ちつつ,後見人の業務を円滑にするため,必要な場合に,家庭裁判所から嘱託して,本人宛の郵便物を後見人の住所,事務所に転送することが認められるようになりました。転送期間は6か月以内で,事情があればその期間を延長することができます。この対応は後見人に限られ,補助人,保佐人には適用されません。
※次回の掲載日は、5月31日前後を予定しております。
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